[tweetnovel: ルイちゃんのあまーいほおぶくろ。]



 ルイにはほお袋がついているらしい。真っ白でふくふくしたやわらかいほっぺたを膨らませると、そこに美味しい食べ物を隠しておけるようだ。今日も、大きなおめめをくりくりさせて、テーブルの上のお菓子の前できょろきょろしている。素早く右を向けばさらさらの長い髪が左へ跳ねる。あれは狙ってるな。

 背中越し、肩甲骨の下辺りにためらいの視線を感じる。ルイは自分からすると随分小さいので、目線も下のほうだ。まばたきをすると蝶々みたいに優雅な長いまつ毛がぱしぱししている。綺麗だけど、本人は邪魔じゃあないのか、と考えたことがある。その優雅な子リス娘は目下、テーブルの菓子にくぎ付けだ。

 昼下がり、たしかに小腹の空く時間帯か。自分はなんとなく手持ち無沙汰で台所に立ったのだが、それなりに楽しんで水回りの汚れを駆逐していると、退屈な上に空腹になったらしいあの子は、お八つが食べたいの、とか相手をして、とか自分からなかなか言えないくらいには内気なほうだ。可愛い我儘なのに。

 彼女は幼く、動きもいちいち小動物じみている。はっきり言って無駄な動作が多く、自分の体を上手く扱えていないのがよく判る。一言「頂戴」と可愛く言えればいいのに、戸惑うようにこちらの背中と菓子とをちらちら見比べて、泣きそうな顔をしている。内心、笑いそうになりながら、成り行きを見守る。

 ぱくっ。さんざん迷ってためらって、目が潤んでしまうくらい考えたらしい。それでも欲に敗北する、それでこそだと思う。嬉しそうにほお袋を膨らませて、ほっぺたと唇に甘いクリームをくっつけたかわいい天使が出来上がる。満足そうな表情。やってくれたな、と喉の奥で笑った。



                                          おわり。






 2013年の春頃に、ツイノベ5連投で書いたルイちゃんのほお袋の小話。このときはエイプリルフールでルイちゃんを大変酷い目に遭わせてしまった罪悪感から、「るいちゃんごめんね!キャンペーン」期間中で、なにかとなるべくほのぼの可愛く甘ったるくを目指したものをかいて、るいたんは可愛いんだよ! ほんとうは! と心の中で主張していました。
 これは比較的その試みが成功したものだと思うのですが、いかんせん完全にるいちゃんが頭の足りない食いしん坊小動物娘と化していますね!

 
るいちゃんは! そんなに! おばかさんじゃないよ!!!! って主張したくなるくらいに、おばかさんに見えてしまうるいちゃんでした……。


 ちなみにオチとして考えていた没ENDがありまして、

 「食べたな〜? 食べたな? よしよし、お菓子を食べちゃった悪い子は、お兄さんと一緒に薄暗い所に行ってお仕置きしないとなぁ〜……?」
 「…………(ぷるぷる……((;ω;))イヤイヤ〜!)」
という安定のヒドいオチだったよ!!!! 没にして正解だったと思います(´ω`)